システム奮闘記:その106

LANケーブルはツイストペア



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(2016年11月14日に掲載)

ノイズ対策

 ツイストを英語にすると「twist」だ。  「twist」とは「ねじれ」  という意味だ。
ツイストペアケーブル(より対線)
ツイストペアケーブル(より対線)
赤線と白線の2つの線が対になっていて、螺旋状になっているケーブルを
ツイストペアケーブル(より対線)という。

 LANケーブルの中には8本の導線があり、それぞれが対になっている。
 そのため4個のツイストペアケーブルになっているのだ。

LANケーブルの中にある4個のツイストペア(CAT5e)
ツイストペア
LANケーブルの中には、4個の対になったケーブルがあるのだ。

CAT5eのケーブルのため、十字介在は入っていないし
ましてやケーブルは金属箔で覆われていないのだ。

 ところで、なぜツイストペアになっているのか。
 ネットや書籍では、大抵、以下の説明になっている。

線が平行の場合
線が平行の場合
線が平行の場合、外部のノイズ(磁場)が発生すると、それに伴い起電力が発生する
平行線の場合、各部分での起電力が加算されるため、ノイズが累積されてしまう。

 もし、ツイストペアケーブル(より対線)の場合だと、以下のようになるのだ。

ツイストペアケーブル(より対線)の場合
より対線の場合
ねじれを入れることで、ねじれの前後では起電力の向きが反対になる。

 ねじれによって、ねじれの前後で起電力の向きが反対になることで
以下の効果が生じる

ツイストペアケーブル(より対線)の場合だとノイズを打ち消しあう
より対線の場合だとノイズを打ち消しあう
ねじれの前後で起電力の向きが反対になるため
前後の起電力同士で、打ち消しあう効果が生じるため
ノイズの影響をなくす(もしくは減らす)ことができるのだ。

 ノイズ防止のための「ねじれ」なのだ。

 だが、これだけだと

 釈然とせぇへん!!

 なのだ。

電磁波と起電力

 だが、ふと気づく。  ファラデーの誘導起電力の話だ。
レンツの法則
レンツの法則
磁石を近づけたり、遠ざけたりする事によって、
面を貫く磁束が変化した時、回路に電流が発生し
磁束の変化を妨げる働きをする。

磁束が変化した際、磁束の変化を妨げる電流が発生する現象を
レンツの法則というのだ。

 レンツの法則を頭に入れた後、もう一度、ノイズが発生した時の状況を見てみる。

ツイストペアケーブル(より対線)の場合
より対線の場合
ノイズ(磁場)が発生した場合、それを打ち消す方向に起電力が発生する。
だが、この起電力が信号のノイズになってしまうため、より対線にする事で
起電力同士で打ち消しあい、ノイズがのらないようにしているのだ。

 これこそ設備は要らない

 知恵の結晶によるノイズ対策

 なのだ。


撚り線とノイズ対策

 ところでより対線にしている理由だが調べてみると他にもあった。  ツイストケーブル自身が出すノイズ対策  だというのだ。  宮崎技術研究所の技術講座「実用ノイズ対策技術」 4.平衡 (1)〜(3)  ノイズ対策(電気信号)  ツイストペア線 - Security Akademeia
もし平行線同士なら
平行線同士ならノイズが発生する
ツイストペアだが、お互い反対方向に電流が流れている。
(詳しい事は)

電流が流れているので、導線の周囲に磁場が発生する。
もし2本の線が平行に並んでいたら、お互いの磁場が足し合わされる。
それが磁場(ノイズ)発生源になってしまうのだ。

 そこで撚り線にする事で、以下のようになる。

撚り線にする
撚り線にすると
磁場の向きが隣同士で反対方向になる。

 隣同士の磁場の向きが反対になっている事で、ノイズ発生を抑えているのだ。

隣同士の磁場の向きが反対になっている事で、ノイズ発生を抑えている
隣同士の磁場の向きが反対になっている事で、ノイズ発生を抑えている
隣同士の磁場が反対方向に向いているため、それらが打ち消しあう効果がでる。
そのため、撚り線にする事で、磁場(ノイズ)の発生を抑えているのだ。

 これもまさに・・・

 装置不要の知恵の結晶

 なのだ。

 LANケーブルの、より対線は4本あるのだが

 それぞれの
 
 撚りピッチ(よりピッチ)が異なる

 のだ。

 ピッチとは何なのかを見てみる。

ピッチとは
撚り線のピッチとは
線が360度回転するまでの長さの事をピッチというのだ。

 ところで、LANケーブルの中にある4対の撚り線は、それぞれピッチが異なる。

4対の撚り線は、それぞれピッチが異なる
LANケーブルの中にある4対の撚り線は、それぞれピッチが異なる
それぞれピッチが異なるのがわかる。

 なぜピッチが異なるのか。
 それは・・・

 ある撚り線が出すノイズの影響を

 他の撚り線が受けないようにするため

 というのだ。

 もし、ピッチが同じだった場合を見てみる。

もし、ピッチが同じだった場合
もし、ピッチが同じだった場合
ある撚り線に電流が流れた際、その撚り線から磁場が発生する。
発生した磁場は、隣にある撚り線の所を通り、起電力を起こす。
それがノイズになるのだ。

 もし、ピッチの長さが倍違う物同士の場合だと以下のようになる。

ピッチの長さが倍違う物同士の場合
ピッチの長さが倍違う物同士の場合
電流が流れた撚り線から磁場が発生し、その影響で
隣の撚り線で起電力が発生する。

 だが、よく見ると、起電力同士、打ち消しあっている。

起電力同士、打ち消しあっている
ピッチの長さが倍違う物同士の場合、起電力同士、打ち消しあっている
起電力同士が打ち消しあうため、結果、ノイズが抑えられるというのだ。

 これもまさに・・・

 装置不要の知恵の結晶

 なのだ。
 

LAN入門:目次
ストレートケーブルとクロスケーブル LANケーブルのストレートタイプとクロスタイプの違いを書きました。
リピーターハブとスイッチングハブ リピーターハブとスイッチングハブの違いと、全二重通信と半二重通信の話です。
10Base-T以降では、パケット衝突は、実は擬似衝突などを書いています。
社内LANの調査 2005年に、ブラックボックス化した社内LANを解明した話です。
オートネゴーシエーション 10Base-T、100Base-TX、1000Base-Tなどが混在する環境で
どうやって通信制御を行っているのか
その仕組みを書きました。
LANケーブルの規格 CAT(カテゴリー) LANケーブルの規格のCAT(カテゴリー)の違いを書きました。
データ送信とデジタル信号の符号化 LANケーブルを信号が伝わる際、どうやってデータ送信をしているのか。
デジタル信号の周波数を抑えながら、高速で信号送信する技術を書きました。
10Base-T、100Base-TX、1000Base-Tについて書きました。
データリンク層 LAN内のパソコンや通信機器同士の通信はMACアドレスが使われています。
それを司るデータリンク層について書きました。
表皮効果と近接作用 LANケーブル内で起こっている信号減衰の原因が
表皮効果と近接作用である事と
LANケーブルの撚り線が、ノイズ対策なのを書きました。
ツイストペアとノイズ対策 LANケーブルがツイストペア(撚り線)なのはノイズ対策のためです。
その話を書きました。
差動回路とノイズ対策 LANケーブルは8本あり、データ通信は複線で行っています。
差動回路を使ったノイズ対策の話を書きました。
同軸ケーブルの仕組み 昔のLANに使われていた同軸ケーブル。
現在でもテレビのアンテナに接続する線として使われたりしています。
同軸ケーブルの仕組みや特性インピーダンスの話を軽く触れました。
発振回路 クロック信号を作る発振回路の説明です。
簡単なLC型コルピッツ発振回路を使って説明しました。


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